風の旋律



『島村先生!!』



思い切り、音楽室の扉を開けた。



普段あまり運動をしない僕の足は、筋肉が引きつって痛み、息は上がり、額には汗が滲んでいた。




「どうしたんだ!?」




驚いた表情で準備室から出てきた島村先生。




『音羽の家はどこですか!?
大体の住所だけでも、どの方面かだけでもいいんです!

教えてください!』




僕は島村先生に掴み掛かるようにして、質問をぶつけた。




無意識になのか、付けていたはずの手袋やマフラーは床に落ちていて、コートも前が開いていた。



階段を登っているときに取ったのだと、まだ頭の隅に残っていた冷静な僕が答える。




「どうしたんだ?落ち着いて。
何かあったのか?

生徒の個人情報は簡単に教えられないよ。」




先生は諭すように僕の肩を抱いた。




『何かあったのかも知れないんです!
悲鳴が聞こえて、電話が切れたんです!

下校途中だったはずだから……。
通学してる大体の道で構いません!
教えてください!!』






< 105 / 139 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop