御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「すっ、すみませんっ……」
「あ、いや、謝らないで……スマホ落としたの、なんとなくわかったんだけど……起き上がるの面倒くさくて……ありがとう」
「いえっ……」
どうやら始は起きていたらしい。余計なことをするんじゃなかったと早穂子は反省して、さらにまた深々と頭を下げた。
「あ、あの、すみませんっ、おやすみなさい、ゆっくりやすめたらいいですねっ……! 睡眠はとっても大事ですからっ!」
と、口走り、そのまま全速力でレストルームを飛び出したのだった。
これは早穂子の、入社後に思いがけない場所で山邑始と話したという記念すべき思い出になったのだが――その後まさか一夜を共にしてしまうとはいったい誰が予想できただろう。
そして今日、彼に連れられて、リゾートにまで来ているのである。
当事者であるはずの早穂子だっていまだに信じられなかった。
(それにしても睡眠は大事って……我ながら何を言っているんだろうと感じだったけど)
早穂子はふっと笑って、サラサラのシーツの上で寝返りを打つ。
「サホちゃん、なに笑ってるの?」
「えっ……!?」