御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「遅れてごめんなさい」
女性の声に振り返ると、しっとりした素材の黒のロングドレスを見にまとった涼音が、一回り程年上に見える外国人男性と腕を組んで入ってくるところだった。
男性はラフなジャケット姿だったがずいぶんハンサムで、涼音をエスコートしつつ、彼女の美しさに満足しているといわんばかりの笑顔を浮かべている。
彼女たちはほかのメンバーと気軽に声を掛け合い、にこやかに笑っている。
(恋人……だよね?)
その様子を見て、早穂子はほんの少しホッとしていた。
始に親し気に“涼音”と呼ばれる彼女のことを、早穂子はほんのちょっぴりではあるが、嫉妬していたのだ。
彼女の方がずっと長く、始と友人なのだから当然だと受け入れられず、モヤモヤしていた。
我ながら小さすぎると思うが、彼女がパートナーを連れてここに来たのを見て、早穂子はそれまで彼女に感じていた複雑な感情を、ようやく手放すことが出来そうだった。
(よかった……ちゃんと恋人がいるなら、別に始さんとは……)
胸を撫でおろしつつ、隣に座っている始の顔を見る。
だが始はなんとも言い難い――複雑そうな表情をしていた。