御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

「だっ、だめですよっ!」


いくらなんでも空港でキスをするなんて恥ずかしすぎるので、慌てて首を振ったが、始は少しつまらなさそうに唇を尖らせながら、早穂子の手を握った。


「だって、サホちゃん、ちょいちょい男どもに振り返られてるから」
「それは勘違いだと思います」


自分で言うのもなんだが、異性に振り返られるような魅力が自分にあるはずがない。

きっぱりと言い切ると、始はフフッと笑って、繋いでないほうの手で早穂子の頬を撫でた。


「わからない? きみ最近、すごくきれいになったよ。肌も髪も目も、きらきらしてる」
「それは……だとしたら、睡眠時間が増えたからでしょうね」


早穂子は始の指の感触に内心震えるような甘いときめきを感じながら、笑顔を浮かべた。


「あはは、そうそう、そういうこと!」


始は快活に笑って、それからタクシー乗り場へと歩き出した。


(本当は、私が始さんに恋をしているからだ……さすがにそんなことはいえないけど……)

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