御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

「ここから山邑リゾートのコテージまで、タクシーで十五分だから」
「はいっ」


早穂子は満面の笑顔でうなずく。

長崎へ行った時は一泊二日だったが、今回はなんと一週間も始と一緒にいられるのだ。正直言って、スキップでもしたい気分だった。


(楽しみだなぁ~!)


始に手を引かれ、ウキウキした気持ちでタクシー乗り場へ向かうところで、

「山邑くん?」

と、背後から女性の声がした。


「ん?」


始が肩越しに振り返ると同時に、空港の入り口からワンピース姿の女性が、大ぶりのサングラスを外しながら近付いてくるのが見えた。

年のころは三十前後の、しっとりした美人だ。歩く姿も優雅で、一目ででただものではないとわかる雰囲気が漂っていた。


(誰だろう……?)


早穂子は呆然とその女性を見つめる。


< 90 / 276 >

この作品をシェア

pagetop