御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「ここから山邑リゾートのコテージまで、タクシーで十五分だから」
「はいっ」
早穂子は満面の笑顔でうなずく。
長崎へ行った時は一泊二日だったが、今回はなんと一週間も始と一緒にいられるのだ。正直言って、スキップでもしたい気分だった。
(楽しみだなぁ~!)
始に手を引かれ、ウキウキした気持ちでタクシー乗り場へ向かうところで、
「山邑くん?」
と、背後から女性の声がした。
「ん?」
始が肩越しに振り返ると同時に、空港の入り口からワンピース姿の女性が、大ぶりのサングラスを外しながら近付いてくるのが見えた。
年のころは三十前後の、しっとりした美人だ。歩く姿も優雅で、一目ででただものではないとわかる雰囲気が漂っていた。
(誰だろう……?)
早穂子は呆然とその女性を見つめる。