風薫る
「あっ、ねえ黒瀬君……!」


思い切りこちらを見つめながら、愕然とした顔をしている。


俺も真剣な表情をしてみた。


「うん?」

「リズム決めなくても、最初に必ず名前を呼べばよかったんじゃない?」


え。


「あっ」


その通りだ。実にその通りなんだけど。


「待って、それ言わないで……! せっかく決めたんだから使っていこう、ね?」

「うん、もちろん使うけれど……!」


気づかなかった、気づかなかったねえ、と二人で頭を抱える。


でもまああれだ、名前を呼べないときがあるかもしれないし。

……いや、ないかもしれないけど。


た、多分あるある。うん。


そんなことを二人で話し合って、お互いに妥協点を見つけた。


そうしたら、リズムは使っていこうという結論になった。


「よし、じゃあ練習したいです!」


はい、と手を上げて意気込んだ木戸さんに、首を傾げる。


「練習?」

「リズムの練習」


なるほど。
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