風薫る
黒瀬君を勝手に拠りどころにしてしまったけれど、おかげでちゃんと頑張れた。


後悔はない。隣に立つことに何の不安もない。


私の精一杯を尽くせたと思う。


……ただ隣に立つために必死になれるのは、相手が黒瀬君だから。

黒瀬君の前では、ちゃんとしていたいから。


ひっそり深呼吸をして、無理矢理落ち着かせる。


黒瀬君もひっそり深呼吸を繰り返した。


二人とも通常に戻ったところで、もう一度互いに向き合って。


「おかえり、木戸さん。あとただいま」

「ただいま。お帰りなさい、黒瀬君」


緩む頬に任せて笑って、一段、階段を一緒に下りた。
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