Sweet Love
 噴水の周辺を何度も周ってみたが、なかなか誠二先輩の姿は見当たらない。


 携帯を開いて、誠二先輩に電話しようとしたそのとき、誰かに背後から肩を叩かれた。



「え?」



 後ろを振り向くと、誠二先輩が不機嫌そうな顔であたしを見下ろして立っていた。



「遅い」

「あ、…すいません!!」

「七分、遅刻」



 ――細かいっ。



 誠二先輩は腕時計を人差し指で叩きながら、あたしに現在の時刻を見せてくる。



「本当に待たせてごめんなさい。…でも先輩、どこにいたんですか? ずっと探してたんですけど…。ぐるぐる周ってたんですけど全然いなくて…」

「俺もぐるぐる周ってたんだけど」

「え…」

「最初裕子さんの姿見つけたから、近付こうと思ったら、すぐ行っちゃうし」

「…ということは、ずっと後ろにいたんですか?」

「そう。ぐるぐる周ってたんだよ、無駄に俺らが」

「本当にごめんなさい」



 初めての先輩との約束なのに、あたし最初から最悪だ。



「もういいよ。とりあえず会えたんだから」



 そう言って、誠二先輩は先に歩き出してしまう。先輩の横に付こうと、あたしは慌てて先輩の背中を追った。
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