君が思い出になる前に…
「そんなに…?ママになんて言ったらいいと思う?」
泣きじゃくりながら、絵美が言った。
「なんて言ったらいいかなぁ…。話しても、理解してもらえそうもないし。どうしよう…。クローゼットに隠れてたとか?」
「何でクローゼット?」
「そんな、何でって言われても…。今朝起きたら、急に学校行きたくなくなったから、隠れてたとか…」
「そんなの通用するかなぁ…。あれ?祐ちゃん怪我したの?何で?大丈夫?」
絵美がおれから離れた時、初めて額の包帯に気づいたらしい。
「大丈夫…。大した事ないよ」
気絶して頭を打ったなんて言えない。
「ほんとに大丈夫?」
また今にも泣き出しそうな顔してる。
「大丈夫だよ。ころんでちょっとぶつけただけだから」
自分のタイムスリップより、おれの怪我で動揺してる。
絵美は夢でも見ていた感覚なんだろうか。
でもあまりにもリアル過ぎる。
タイムスリップしておれと加賀紀子がこの世界にきたんだから、絵美が未来にタイムスリップしたとしても、疑う余地など何もない。
しかしなぜ?どんな理由がそこにあったんだろう…。


もう12時を回っている。
中学生が外を歩ける時間じゃない。

絵美は落ち着きを取り戻し、絵美のお母さんも安心したみたいだった。
家族に上手く話せたのかな?
おれの家じゃ、きっと怒っているだろうな…。母さんも姉さんも。
案の定、家に帰ったらえらい剣幕で怒られた。
病院を抜け出し、こんな夜更けまで絵美の家にいたんだから。
それだけじゃない。学校からもしっかり電話があったそうで、先生の制止を無視して学校を飛び出した事まで持ち出されてしまった。
仕方ない。ここはじっと我慢して、相手の気が収まるまで聞いていよう。
聞き流すけど…。


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