君が思い出になる前に…
「二時間ぐらい経って、ようやく手術が終わったの。祐ちゃんのお母さんが手術室から出てきて、あたしにしっかり気を持ちなさいって言ったの」
「どういう事?それ」
「祐ちゃんの意識が戻るかどうかわからないって…」
また泣き出す絵美。「え!?おれが!?」
「うん…」
「うそだろ!?そ、そんな…」
「あたし何がなんだか分からなくって、パニックになっちゃって…、おもわず大声で叫んだら失神しちゃったみたい…。その後の記憶は無いし…。気がついたら、いつの間にか自分の部屋のベッドに戻ってた…」
「そんな事って…。あるのか…。でもなんで絵美が未来に?」
「なんで?」
解る訳ない質問の、しあい。まったく意味が無い。
おれが出勤途中に事故に遭い、意識不明の重体に。そこには、おれの部屋で目覚めた絵美と、医者の母さん。
おれの元いた15年後の出来事じゃない。確実に…。
「大丈夫…。おれのいた未来じゃない。全然違う世界だよ。おれはここにいるし…」
「うん、そうよね…。今、ちゃんと祐ちゃんを掴んでる…」おれのシャツをしっかり握っている絵美の手は、少し震えていた。
「あたし、夢見てたのかな?」
「わからない。夢かもしれないし、もしかしたら本当にタイムスリップしたのかも…。おれがこの世界に来たのと同じように、絵美が未来にタイムスリップしたとしても、否定する事なんておれにはできない。この身に実際起きてるんだから。それにお母さんが部屋に朝来たとき、絵美は部屋には居なかったらしいし…」「ママ、ドア越しに凄く心配してたみたいだけど…。まだ話しもしてないの。何をどう説明したらいいのかわからなくって…。どれくらいあたしいなかったのかな?」
「絵美のいなくなった時間がわからないけど、朝からだとすれば、おそらく15~6時間ぐらいじゃないかな…」
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