君が思い出になる前に…
答えようがない…。ごまかせない。
「本当は…。あの、実は、おれ前に、あの場面一度見てるんだ…。加賀があの男とぶつかって、脳しんとうを起こす現場を…。この窓から見てたんだ…」
本当の事を言ってしまった。
「え?どういう事?わかんない…」
当然だよ。理解できなくて。
「わかるように説明して」
こりゃ開き直って本当の事、話すしかないか…。信じてもらえないだろうけど。
「じゃあ、真面目に話す。信じる信じないは、加賀にまかせるから…」
紀子は隣りの自分の席に座った。
「うん…、聞かせて」
真剣な表情だ。
「実はおれ、昨日の朝、目が覚めたら過去に戻ってたんだ。わかりやすく言うと、おれは未来から来た人間なんだ。外見は昔のままだけど、本当は30歳なんだ…。2007年からタイムスリップしてきたんだ。多分」
「多分って?」
真剣に聞いてくれてる。
「何でタイムスリップしたのか、全く分からない…。前の晩、寝苦しかった事だけは覚えてる。目が覚めたら15年前に戻ってたんだ…。信じないよね?こんな話し」
自分で苦笑してしまった。
「信じる…」
紀子が言った。
「うそ!本当に信じてくれるの?」
紀子の答えに驚いたのは、おれの方だった。
「うん…」
あくまでも真剣な顔の紀子。
「どうして?」
逆に質問した。
「あたしもそうだから…」
真顔で紀子が答えた。
「え!うそ!」

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