君が思い出になる前に…
「と言う事は過去の記憶も、15年後の事も、あたしと元宮君では違うっていう事?」
「そんな事あり得るのか?それがパラレルワールドって事なのか?」
「パラレルワールド?」
紀子が首をかしげた。
「あ、うん。昔、SF雑誌の記事にあったんだけど、パラレルワールドってのが存在するって話しなんだ。少しずつズレた世界が無数に存在するって。超SF的な話しなんだけど、考えれば考えるほど、それにそっくり当てはまる気がする」
「どういう事?もっと詳しく教えて」
紀子は身を乗り出してきた。
「おれに姉さんがいて、加賀にはお父さんが生きているって事がパラレルワールドだと思ってた…。でも、おれの過去と加賀の過去、おれの未来と加賀の未来がマッチしないって事は、おれたち自体、まるで違う世界から来たってことになるんじゃない?」
「それって、その無数にある世界の数だけ、あたしたちも存在するって事?」
「うん、五次元とか六次元とか言うらしいんだけど、同時に無数の自分が存在するんだって…」
「亡くなった人が生きてたり、いないはずの人が存在したりって事は?」
「それはきっと、おれたちにも言える事なんだと思う。ある世界には居て、別の世界では存在すらしないのかもしれない…」
「父やお姉さんの事を考えれば、それも納得できるわね…」深くうなずく紀子。
「なんか頭痛くなってきた」
そう言って紀子はうなだれた。
「おれも…」
同じく自分で言ってて頭が痛い…。
二人の間にしばらく無言の時間が過ぎていった。

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