君が思い出になる前に…
それだけじゃないの?
「母さん、って…、い、医者?」
「ホントだ…。祐作やっぱりおかしいね。明日さぁ、学校終わったら、病院にきなさいよ」
母さんは真面目な顔でそう言った。
マジかよ!母さんが医者!?
病院って言ったってどこにあるんだよ。行くつもりないけど、どこにあるのなんて聞いたら、また何か言われそうだから、黙っていよう。

「あのね母さん、来週ね、進路相談あるんだけど…」
と、姉さんが食べ終えた茶碗を片付けながら言った。
「響子は前の希望のままでしょ?」
と母さん。
前の希望って?なに?
「うん、変えてないよ。医学部一本」
「い、医学部!?ゲホゲホ!」
びっくりして、喉にご飯を詰まらせてしまった。
「なに…、どうしたの?祐…」
平然とした顔で姉さんは、おれを見てる。
「あっ、なんでもない…、です」
胸を叩きながらやっとの思いで言った。
母さんが医者で、姉さんは医学部志望?なんかすさまじいくらい、無限の世界だなぁ、ここは…。
やっぱり普通じゃない。
「問題は大学よね…。どこにいくかって事よ」
「先生はなんて言ってるの?」
「東大も、頑張ればおそらく大丈夫なんじゃないかって…」と、と、東大?
あ、あの東京大学のしかも理科三類!?
「じゃあそうしたら?」
母さんもすらりと言ってるし…。どうなってんの?この親子は…。
「でもね母さん、東大の医学部ってガリ勉ばっかりでさぁ、偏った人が多いって聞いてるわよ。だからあたし、母さんの出た恵慈医大に行こうかなって思ってんの」
恵慈っていったら、私立のトップクラスでしょう。
そこを母さんまでもが恵慈医大出てるって?うっそ!?
ホントかよぉ!
それにしてもなんか、とてつもなく偉大な話ししてるなぁ、ダジャレじゃなくて…。
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