君が思い出になる前に…
いずれにしても人間のなせる技じゃないよな…。超現実的。けど、実際に起きてるのは間違いない。超現実的な世界がこの身の上に…。


「祐~、ちょっとおいで~」
姉さんが居間で呼んでいる。
なんだろう?
「なに?」
姉さんが紅茶を入れていた。
「母さんがね、ケーキ買ってきてくれたの。一緒に食べようよ」
なんか嬉しそうな姉さん。
夕飯の会話の時とは、裏腹な穏やかな表情。きっとケーキのせいなのか?
けどさっき、ご飯食べたばかりでしょう…。
女はこういうの、別腹って言うんだよな…。
「あぁ、いいお風呂だったぁ~」
バスタオルで頭を拭きながら母さんもきた。
か、母さんまでタンクトップに短パンかよ!
どうなっちゃってんの?この世界は…。前の世界じゃ、母さんは、こんな格好絶対しなかった。

この家は、まるでおれを男として見ていないようだ…。
て、言うか、この程度の格好でとやかく言うおれが間違ってるんだろうか。
「なに突っ立ってんの?座ったら?」
「う、うん」
姉さんに促されるまま、テーブルについた。
「祐もそろそろ、自分の将来考えなきゃいけない時期でしょ?何になるつもりなの?」
入れてくれた紅茶を差し出しながら、姉さんが言った。
「将来…?」
おれの経験してきた事が『無』になるなら、また1から考え直さなきゃいけないって事か…。
本当にこのままこの世界が続くのだろうか?
「どうしたの?祐作」
と、母さん。
「ん?いや、なんでもない…」
考え込んでいた。おそらく焦点の定まらない、間抜けな顔をしてたんだろうな。「できるんなら、祐作も医者になって欲しいなぁ。母さんせっかくあそこまで病院大きくしたんだから…」
「い、い、医者!?お、おれが!?」

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