君が思い出になる前に…
「じゃあ、祐ちゃんは5日前の祐ちゃんじゃないって事?」「多分、違うと思う…」
多分って、なんで言ったんだろう…。
完全に違うのに。
絵美の反応が気になったから?
ここにきて、嫌われたくないとか考えてしまったんだろうか…。
情けない…。
「でも、祐ちゃんは祐ちゃんでしょ?15年後の祐ちゃんでも、今は15歳の祐ちゃんでしょ?」
絵美がこれほど必死になるのは、自分を納得させる為なんじゃないだろうか…。「正直、おれにも出せない答えはいっぱいあるよ…。なにがどうなってしまうのか、この先の事なんて全くわからないし…」
かえって不安をあおったかも知れない。「…」
無言の絵美。
おれも黙ってしまった。

「突然来たっていう事は、またいつかどこかにいっちゃうのかな…」
ポツリと絵美がつぶやいた。
「え?」
不意に言われたので反応できなかった。「いつかは祐ちゃん、居なくなっちゃうのかなぁって…」
絵美の頬に光るものが見えた。
「それもおれには解らない…。どうなってしまうのか」
床に片手をついてうなだれた絵美。
「なんで?」
「明日がどうなるのかさえ、分からないんだもの。でもね、5日前にもおれが居たように、多分ずっと『元宮祐作』は、存在すると思うよ…。明日違う『元宮祐作』に変わっていたとしても、絵美にはきっと気づかないと思う…」
「祐ちゃんは祐ちゃんよね?変わったとしても、祐ちゃんは祐ちゃんでしょ?」やっぱり泣いていた。
ポロポロとこぼれ落ちる涙。
「うん…。多分、そうだと思うけど」
スーッとおれに近づいてきた絵美。
おれの肩にもたれかかった。
「ずっとそばにいて…。どこにも行かないで…」
絵美の涙がおれのTシャツに伝ってきた。熱い涙…。
「いるよ…、ずっとそばに…」
本当はどうなるのか全然解らない。
明日どうなるのかさえ…。
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