君がいなくなって
「あなたの子供じゃないなら、お金のかかる事なんてしなくてもいいじゃない!」

夜中。

トイレに行きたくなって階段を降りていた時。

居間から聞こえたその声は去年、新しいお母さんだよ、と言われた女の人のものだった。

その人は俺には産まれたばかりの妹を一切触らせなかった。

父のいないところで、常に言葉の暴力。

何故、そんなに当たり散らされるのか、ようやくわかった。

俺は父さんの本当の子供じゃないんだ。

「血は繋がっていなくても、俺の子供には違いない!」

父さんがそう言って目の前にあるテーブルをガツン!と叩いた。

「あの子にはもう、バイクを乗せないで。
そんなお金があるなら、私とあなたの娘にお金を使ってちょうだい」

「何だって?」

声を荒げた父さん。

もう、耐え切れなくなって。

「じゃあ、バイクに乗るのを辞める」

ドアを開けてそう言っていた。
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