こじらせカップルに愛の手を

私が向かった先は部長のデスク。
こうなったら、部長に直訴するしかないと思ったのだけど、

「悪いけど、僕も佐伯くんの意見に賛成だから、今回は遠慮してくれるかな」

私の訴えも虚しく、あっさりと断られた。

「どうしてですか!」

納得がいかず食い下がると、部長は苦笑いを浮かべてこう言った。

「あのね。向こうだって若くて可愛い子の方がいいに決まってるでしょ。君もその辺、察してよ」

部長の言葉にカチンときたけれど、それでも私は必死に頭を下げた。

「いえ、私にはサブリーダーとしての責任がありますし、今日の為に準備だってしてきました! どうか私を行かせてもらえませんか!お願いします」

けれど、

「交渉なら佐伯くんがいれば十分だし、君は必要ないんだよ。それと、この際だからハッキリ言うけどね、サブリーダーなんて肩書は、佐伯くんが君に気をつかってつけてるだけで、そんなの正式には存在しないからね。君みたいに無駄にやる気のあるお局OLが一番扱い辛いんだよね」

部長は私に冷ややかな目を向けながら、無情にもそんな言葉を浴びせたのだ。
ガツンと頭を殴られたような衝撃だった。

部長のデスクを後にし、私はしばらくの間、誰もいない非常階段に座り込んでいた。

そっか…。
私って佐伯に同情されてたのか。

『おまえ、サブリーダーなんだからしっかりやれよ』

そんな風に言われて、すっかりその気になっていた。
ずっと佐伯をライバルだと思って張り合ってきたし、サブリーダーとしてチームをまとめてきたつもりだっ。

でもそれは、全部私の一人相撲だったのだ。
辛さを通り越して恥ずかしい。

ジワジワと涙が滲みかけたその時、非常階段のドアがガチャと開いた。

「おまえ、ここにいたのかよ。探しただろ」

息を切らせながら入ってきたのは、佐伯だった。
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