リアル☆タイムスリップ
「一体どこを探ってるんだろうねぇ」

 ぼやきながら夕刻屯所に帰ると、縁側に噂の山崎の姿を見つけた。
 随分疲れた様子だ。

「おぅ、新入り。お前、監察方やったな。何か掴んだことあるかい?」

 正宗は少し戸惑ったが、話しかけられて無視するわけにもいかない。
 山崎は上役に当たるのだろうし。
 ぺこりと頭を下げ、正宗はそろそろと山崎の少し後ろに座った。

「いえ、これといっては。山崎さんは、何かわかりましたか?」

「あかんなぁ。けど絶対何かある。最近長州の奴らをよ、あんまり見かけんのや」

「長州者は、少し前に撤退したじゃないですか」

「それが、最近になってちょろちょろ戻ってきてたんや。けどそいつらを見かけん。俺たちに見つからんよう用心してるんやと思う。何か隠しとるってこった」

 ふむふむ、さすがは監察方。
 町に流れる空気の変化も読むようだ。

「……あのぅ……。山崎さん、四条の枡屋ってぇ古道具屋、ご存じで?」

 聞いてみると、山崎は、顎に拳を当てて首を傾げた。
 何事かを考える。

「いや……。けど四条か。あんさん、そこで何か見たんかい?」

 正宗は山崎を窺った。
 枡屋のことまでは気付いていないようだが、その辺りで何か引っかかることはあるらしい。

「実は、枡屋のあるじが長州の間者として働いているかもしれないのです」

「何やて?」
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