リアル☆タイムスリップ
「……まぁ飛行機じゃないけど」

『よいではないか、よいではないか』

 スケベ親父のような物言いのこの幽霊的なものは、この神社のご神刀に宿るという、刀の……精とでもいうのだろうか。
 長い髪を頭頂で結った狩衣姿。
 昔絵本で見た牛若丸そのものだ。

 もっともそんな名前ではなく、蛍丸(ほたるまる)というらしい。
 姿は子供のようだが、祠の中のご神刀そのものなのである。

『近年、京の都には、歴女なる女子が全国から集まっておるとか。刀剣女子なる言葉もあるそうじゃし、わしなどアイドルさながらの人気じゃろうなぁ』

 欄干に座って、呑気に言う。

「蛍丸なんて、そんなメジャーじゃないような気がするなぁ」

『真のマニアはマイナー処に目を付けるものよ』

「その姿、通説と違うし」

『ふん。大刀の運命なぞダイヤと一緒よ。ダイヤもいかに美しく輝かせるかで、どんどん削られる。刀も使えば刃毀れはするし、折れもする。それでも生来の美しさを保つために打ち直す。大刀のまま現存するものは、さして使用されておらぬのよ』

 通説では『蛍丸』は大刀だ。
 が、祠の中にあるのは少し大きな鞄に収まる程度の脇差。
 削られ折られ、今の姿になったという。
 本人(?)が言うのだから、そうなのだろう。

「まぁ確かに、無防備で京都に入るのはいろいろ不安だから、護身用に持って行ったほうがいいだろうとは思うけど」

 ぼそ、と正宗が言うと、蛍丸は、やった、と諸手を挙げて喜んだ。
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