リアル☆タイムスリップ
　ぼそぼそ喋っていると、奥から薬屋に化けた山崎が出て来た。
　正宗を見、一瞬だけ驚いた表情を浮かべ、だがすぐに薬屋の顔になって正宗の横に膝をついた。

「これはこれは、旅の途中で足をやられましたか。この人混みやさかい、気を付けんとあきまへんで」

　薬箱を探りながら、山崎はちらりと正宗を見上げた。
　正宗は周りを見回し、傍に人がいないことを確かめると、小声で山崎に話しかけた。

「ここだと思ってました。局長らが、今晩動きます」

「日にちの目星は付けられても、場所までは特定できてへんやろ。けど、ここやで。夜が更けたら、二階に尊攘派の奴らが集まってくる。前に古高に聞いた計画の中心人物らや」

「ではここが会合場所だと局長に知らせます」

「そうしてくれ。わいは何か女将に気に入られて、なかなか解放して貰われへんのや。お蔭で内偵も出来たわけやけど」

　山崎はなかなかな男前だ。
　薬屋なので、何だかんだと理由を付けて滞在を引き延ばされたのか。

「何と、さっき桂の姿を見たで。これを押さえればでかいでぇ。局長らが来たら、わいが中から鍵外すさかい、遅ぅなっても大丈夫やで」

「わかりました」

　そういうことか、と思いつつ、正宗は適当に足に布を巻いて立ち上がった。
　店を出ようとしたところで、二階から出て来た人物が目に入る。

　その辺の者より、格段に身なりがいい。
　女将も丁重に扱っている。
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