アマービリタ
最後の音を弾き終わり、余韻も残し、その余韻も消える頃に彼女はこちらをゆっくりと見遣った。
「綺麗な音色…広江さん、この人いいじゃないですか!この音色を聴けばきっと噂が広まってディナーもさらに繁盛しますよ!」
「いいじゃないですか!生演奏なんて洒落ててきっと上手くいきますよ!」
さんざん不審がっていた奴らが、賛同の声とともに俺を説得してきた。
彼女も不安そうにこちらを見て、懇願するような顔をしていた。いや実際手を組んで、神に祈るような格好をしていたから懇願しているのだろう。
「……。社長命令なら仕方ない、条件付きで飲んでやるよ。」
「本当ですか!!何でも言ってください!」
条件付きでわあるが許可が出たので、顔を輝かせ喜ぶ彼女は、安堵からか少し涙目だった。
泣き虫な奴だな。
「もう!素直じゃないですよ広江さん!」
素直じゃないって、俺はガキか。
苛立つ心を抑え。条件を突き出した。