旦那様は甘くて意地悪
「さぁ行こうか」
「ちょっ、えっ!!」
彼は私を抱きかかえてマンションを出ると、高級車に私を乗せて誰かに電話をしている。
「円の部屋の荷物を今から俺のマンションに運ぶように支持をしたから、今から俺とデートをしよう。急な話で円も混乱しているかもしれないけど、うちの両親も喜んでいるよ。さっきは妻だって言ってしまったけど、正式にはまだ妻ではない。後は君がここにサインをするだけになってある。3ヶ月で俺を好きになってもらうようにするし、大事にするから」
そういって抱きしめられた。
私は抱きしめられた事もないし、どうしていいのか分からずに立ち尽くしていた。
訳がわからないままマンションから連れ去られて、美容室と洋服屋さんがあるお店に連れてこられた。
降りると洋服屋さんの中に案内されて、訳がわからないままに試着をしたりして、洋服が決まると美容室に連れて行かれてメイクと髪の毛を切られたり染められたりとかされた。
戸惑うだけで、まわりのスタッフの言うとおりにしていて、全てが終わって鏡を見ると別人のように感じた。
普段はコンタクトなんてしないし、髪の毛も一本に束ねるくらいで基本はあまりセットなんかはしない。
それくらい華やかを苦手とし、地味に生きてきたのだから、ドレスコードした以来に変わった自分を見て恥ずかしくなる。
「円、綺麗だよ。昔と変わらないな」
「昔?私を知っているの?」
「円は俺と一回だけ会って話したことがあるんだけどな……」
旦那様?は何だか悲しげな顔をした。
だけど私には記憶がなく、なんとなく恋をしたあの人に似てるような気はするけど、まさか初恋の相手なわけもなく、私の記憶にはない。