王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です

「もうギルってば……、そ、そういうのは駄目って言ったじゃない……!」

甘えが増長したせいか最近の彼はやたらとリリアンを求めたがる。以前のように無理やりふれてきたりはしないけれど、ことあるごとに『食べたい』だの『欲しくてたまらない』などと囁いてくるのだ。

日陰の身であっても一生ギルバートを支えていこうと決意したリリアンだけど、その一線を越えることにはやはり簡単には頷けない。
 
そもそも前国王が愛人を持ったせいでギルバートとエリオットは過酷な運命を背負わされる羽目になったのだ。そのことを考えるとやはりリリアンは正妻以外が王の子を孕むことに抵抗を持ってしまう。

“愛人”になる覚悟は出来ても、安易に身体を開くことは出来ないとリリアンは深く悩んでいた。

しかし。

「どうせリリーは僕のお嫁さんになるんだから、少しぐらい初夜が早まったっていいと思うんだけどな」

ぽろりとギルバートが零した台詞に、リリアンは目をぱちぱちとしばたたかせた。

何かの聞き間違いかと思った。あるいはいつもの冗談の延長線か。

けれど、リリアンが素っ頓狂な顔をしているのを見て、ギルバートは「ん?」と小首を傾げたあと少し考えてから「あれ?」と気まずそうな笑みを浮かべた。

「あー……そういえば、メイベルの件でせわしなくなって言うの忘れてたかも……」

その言葉を聞いてリリアンもハッと思い出す。あの夜、彼が『伝えたいことがある』と言ってそれっきりになっていたことを。

「えーっとね。ようやく手筈が整ったんだ。今年中にリリーにはローウェル公爵家の養女になってもらって、年が明けたら大々的に僕との婚約を発表しようと思ってるんだけど……いいよね?」

あまりにも軽い調子で言われたので、一瞬なんの話か分からなかった。『いいよね?』なんて、愛らしい笑顔で小首を傾げられても、リリアンはぽかんとしてしまう。
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