花の色は 移りにけりな いたづらに

私は初めから残された道はそれしかないことを知っていた…


でも見ないふりをして自らその道を踏み外した


大好きな祖父が遺してくれた『華の道』


大好きだった…


祖父も


『華の道』も


暁臣さんも…




「今日これから俺が新しい種をまく」


「…え?」


いつもと変わらぬ笑顔。
私に向けて伸ばされる綺麗な手。


「今日から俺が種から桜芳を育てます。

そのために、このマンションを引き払います。

そして一ノ瀬 総一朗との二人きりでの接触も禁じます」


「…は?」


この人はいったい何を言ってるの…?
種?
マンション?
教授?


「君は一ノ瀬に手折られ枯れた…
だったらもう一度種から育てればいい。
誰にも手折られないように、こちらの手元に置けばいい」


「な、なに…?

だからってなんでマンション…

それに私はもう…」


なにがなんだか分からない…
このまま監禁される勢いだ。
ここで流されてはだめ…


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