花の色は 移りにけりな いたづらに
教授が退室してからどれくらい経っただろう。
外はもう夕暮れだ。
「帰ろう…」
帰り支度をして、研究室をでる。
エントランスホールまで来たとき、嫌でも視界に入る。
ホールのど真ん中に鎮座しているのは、息を飲む程の存在感がある巨大な生け花。
フラワーアレンジメントというよりは『生け花』
ここは文学部日本文学科。
和を学ぶ場所に相応しいそれを、見ないようにうつむいて通りすぎる。
『華』の香りが追ってくるようで、早くその場を離れたかった。
マンションのエントランスを抜けてエレベーターに乗り込む。
早く安らげる場所に…
自宅のドアを開けて、違和感に気づいた。
誰か…いる。