カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。

「少し慣れてきたら、麗ちゃんの特技がいかせる仕事をしてもらうつもり」

「はい。がんばります!」



 わたしの特技?
 あれ、わたしの特技って何のことを言っているんだろう。



「夏彦さん」

「仕事の話はこれくらいにして、食べてしまおう」

「……はい」



 タイミングを逃した。聞けなかった。
 わたしの特技って、夏彦さんは何を見て言ったんだろう。多分、はぴねすでは仕事以外は食べてるしかなかったけど。


 まさか……。
 まさか、ね。
 食べる仕事なんて、ないよ……ね。



「夏彦さんって優しいですね」



 お茶碗とお箸を見ていたら、言いたくなった。
 こうやってちゃんとお礼をしたことがなかった気がするから。

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