カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。


 ***


 その日は午前中から、この間出来なかった品出しをやり切った。
 可愛らしい雑貨類がたくさん。この間見つけたピアスもそうだけれど、クローバーが多いように思う。


 やっぱり、お店の名前に合わせているのかな。



「そこです。それをダブルクリックしてもらって……」



 まだランチタイム前。
 パソコンが置かれたテーブルで、サラリーマン風の男性が何かしていた。パソコンに慣れていないらしく、瞬くんがそばで教えていた。



「今ですよ、今!!」



 瞬くんが叫んだかと思うと、それまで黙って聞いていた男性客がガッツポーズをする。



「伝説の剣ゲット!」



 ゲームかよ。
 パソコンで仕事してるのかと思ったじゃない。男性客もそれが目的だったみたいで、しきりにお礼を言っていた。


 瞬くんは一礼して別の仕事に戻る。


 ランチタイムはもうすぐ。食事をするお客さんが増えてくるはず。
 店内に人が増えてきた。それがわかっているのか、中にいた夏彦さんもホールに出てきた。

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