カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。

 わたしがもっと出来るようになれば、夏彦さんが出てこなくて済む。まだまだわたしはお荷物だ。がんばらなきゃ!



「すみません」



 そんなわたしに話しかける男性客。雑貨の品出しをやめて、すぐに立ち上がる。



「はい。何でしょう」



 彼は困った顔をしている。雑貨を見渡しながら質問してきた。



「あなた、恋人はいますか?」

「え?」

「好きな人は?」

「え、え!?」



 男性客は笑顔だけど真剣な目。何かを探るように見られて、わたしは質問に答えられなかった。



「好きな人、いるんですね」

「え……わたし、どうなんですか?」



 意味のわからないことを言ってしまった。顔が熱い。



「ペアでアクセサリーが欲しくて、恋人にお勧めのペアものありませんか?」

「あ。さっきの質問……」

「ああ! すみません! 僕ってば何て質問をしたんでしょう。本当にデリカシーがなくて、よく彼女にも言われるんです。もう、怒らせてばかりで」

< 112 / 167 >

この作品をシェア

pagetop