カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。

 落ち着きがない。デリカシーがないってのも、そうかもしれない。でも真面目。
 だから彼女は別れない。怒るのは愛があるからなんだろう。



「謝りたくてペアアクセサリーを探してるんですね」

「はい」



 ああ、でもどうなんだろう。物をプレゼントして彼女は喜ぶだろうか。逆に怒るかもしれない。


 物なんかで機嫌取りして、だからって許すか許さないかは別の話。



「お客様。ちゃんと彼女さんに謝ってください」

「え?」

「謝って、幸せと思えるようなデートをしてください」



 彼は首を傾げてしまった。
 そりゃそうだ。店に来たのに、アクセサリーを選んでくれない店員なんて多分いなかっただろうな。


 わたしも売上に貢献しない駄目店員だ。



「彼女が許してくれたなら、帰りに何かプレゼントを買ってあげてください。謝罪とか関係なしに、心からのプレゼントを」

「店員さん……」

「もしもその店にはぴねすを選んでくれたら、嬉しいんですけど」

「絶対、絶対にまた来ます!!」



 手を握られてしまった。だいぶ興奮している様子。わたしが提案したものは彼を喜ばせたみたい。


 売り上げにはならなかったけど、いつか来てくれるよね。



「またのご来店お待ちしております」

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