カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。


「ありがとう、陽希くん」

『三条くんと一緒?』

「ちょっと話し込んじゃって。すぐに帰りますから」



 何となく寂しそうな声だったので、思わず聞いていた。



「今日の夕飯なんですか?」

『冷やし中華』

「わあ! すぐに帰りますね」



 電話を切ると、陽希くんが真っ赤になって立ち尽くしている。



「え?」



 そして思い出した夏彦さんとの会話に、やってしまったと気づく。
 今、ものすごく新婚みたいな会話してたよね。しかも、陽希くんに全部聞かれた。うわ、やっちゃったよ。



「麗さん、店長と住んで――」

「ち、違うの。いや、違くもないけど、これには理由があって」

「……じゃ、仕事戻ります」

「ちょ、陽希くん!?」



 彼はにっこり悪戯な笑みを見せた。



「秘密にしておきます。でも麗さん。秘密にする変わりに今度、話したいことあるんで時間ください」

「え? たまに話してるじゃない」

「そういうのじゃなくて、相談のってください」

「いい、けど? 改まって話すこと?」

「はい!」

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