カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。

 あからさまに苛々している屋島さん。なぜか笑いが込み上げてくる。
 そう、あれだ。静かで笑ってはいけない真剣な場面で、感情のネジが緩んでしまう、あれ。


 いけないと思いながら口を結ぶ。



「遅刻しておいてヘラヘラするな!」

「ごめんなさい」



 素直に謝ろう。不服ではあるが頭を下げた。可笑しくなってしまったことには、謝罪する。



「オレを待たせるなんて有り得ない女だな」



 屋島さんもラフな格好。胸元まで開いたシャツは気になるが、黒のパンツにスニーカー。恰好いいからか、何を着ても様になるのは少々腹立たしい。



「聞いてるのか、麗」

「聞いてますって。で? どこへ行くの?」

「着いてからのお楽しみ、だな」

「面倒くさ」

「ああ!?」

「……何でもないです」



 こんな感じで一日一緒に居なければならないのか。わたしは今日、何回舌打ちされるだろう。


 並んで歩くとやはり背が高さが目立つ。
 はぴねすの男性陣はみんな背が高い気がするけど、屋島さんは特にすごい。

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