カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。

「屋島さん、はぴねすのスタッフみんなにそんな態度なの?」

「まさか」

「え? わたしだけ?」

「うるさいな」



 怒られた。聞いただけで怒られるなんて、今日一日でどれだけ怒られなければならないのか。
 考えただけで萎えてくる。朝から気分が沈む。



「何でわたしはそんな乱暴な言葉遣いなわけ?」

「女だから」



 面倒くさそうに言う。
 ちょっと待って。女だからって何?



「じゃあ、櫻子さんも?」

「勝手に人のこと詮索するな」

「質問しただけじゃない!」



 女だからって何だよ、屋島樹め……なんて言えるはずもなく、黙って屋島さんに着いていくと車が一台マンション前にあった。



「あれ?」



 昨日、屋島さんが乗っていた車とは違う。

 目の前にあるのはバンと呼ばれる少し大きめの車。昨日屋島さんが乗っていたのは、よく覚えてはいないがスマートな感じの乗用車だった。



「これは、仕事用だ」



 わたしが考えていることがわかったらしく、屋島さんはため息まじりに言う。



「じゃあ、今日は仕事?」

「あ? 当たり前だろ。デートだとか思ったか?」



 全く思っていない。その証拠にとんでもないラフな格好をしている。そう思いながら首を横に振る。
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