評論&弄くりノート >兼足跡帳<
※オリジナル1'※

彼は1人、見知らぬ街の路地に居た
…いや、“彼”なのだろうか?
それさえもわからない
とりあえず、呼称がないと不便だから“彼”としておこう

前を見ると、きれいな石畳がずっと向こうまで繋がっている
緩やかな下り坂になっているのだろう
道はずっと先まで見渡すことができた


道の左右にはレンガ造りのアパートが軒を並べていたが、空き家が目立っているのが外からでも見て取れた
裏通りなのか、人通りも少なく、どこか寂しい雰囲気がする場所

ここは、どこだろう

そう思ったが、考えても分からなかった
世界が壊れたとき、きっと自分の頭も、どこか壊れてしまったに違いない

だって、こんなにも知らない街なのに、
どこか知っている
見たことが、あるような気がする

だけど、それが本当かどうかは分からない
偽物かもしれないし、本当は全く違う街なのかもしれない




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