最愛婚―私、すてきな旦那さまに出会いました
「なんて送ったの?」

「遅くなったので久人さんのところに泊まります。もう寝るからおやすみなさい、って」


私としては、夜更かししません、健全です。すぐに返信いただいても見られません、というニュアンスを込めた、なかなか優秀な出来だと思ったんだけど。

久人さんはため息をつき、私の頭に腕を伸ばし、くしゃくしゃとかきまぜた。


「それね、"これからいいところだから邪魔すんな"って取れるよ」

「え!」

「だから明け方に電話してきたんだな…。"邪魔はしないが、目は光らせてるぞ"ってメッセージでしょ、たぶん」

「え!」

「会ったらなに言われるかねえ…」


意外なことに、久人さんの寝起きはどうやらスローだ。目覚ましと共にぱっと起きる、みたいな感じかと思っていたのに、案外エンジンが温まるのに時間がかかるらしく、なかなか寝床を出ようとしない。

ちょうどよく光を遮るカーテンは、まぶしすぎない程度に朝の光を通し、静かな寝起きの寝室をなんともいえず心地いい明るさにしてくれている。


「そういえば俺、桃の今の部屋も見たいんだ」

「私の部屋ですか?」

「うん。どんな暮らししてるのかとか、知っておきたいじゃない?」

「あ、じゃあ、引っ越す前に、夕食会でもしましょうか。千晴さんも呼んで」

「なに言われるかねえ…」


戻った。


「あの、久人さんに冤罪がかけられないよう、ちゃんと説明しておきますから」

「なにもしてないって?」

「はい…ああ、もう、そういう問題じゃないですね。私が妻失格ですね」


よく考えてみたら、全部私じゃないか。私が普通に相手できていれば、冤罪なんて生まれなかったんだ。

気づくとすっかり身の置き所がなくなって、情けなくて枕に顔を伏せた。

それを上から押しつけるように、ぐりぐりと久人さんが頭をなでる。
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