もう戻れないよ?
30分くらいたっただろうか。

不意に彼女が抱きついてきた。


泣いているからか

いつも通りなのか

とても力が入っていた。


僕に戸惑いはなかった。

ここは、ホテルの一室だし、

一般的には、男女がそういうことを

する場だ。


何も起きないなんて、思って彼女と来た訳じゃない。


ただ、分からないのは、涙のわけ。

彼女はまだ泣いていた。

まだ、というより、泣きかたはどんどん強くなっている。

抱きついて、というより、しがみつかないと

悲しみの、辛さの風に飛ばされてしまう


僕は彼女の背中にそっと腕を回した。
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