秘書と野獣

言葉に詰まりながらやっとのことウサギが口にしたのは、受け取り手次第でどうとでも解釈できる曖昧な答え。それでも服部社長はうんうんと満足そうに頷いている。
ただ一人状況が飲み込めない俺の周囲に不穏な空気が流れているのをひしひしと感じたのか、ウサギはそういえばとばかりにお手洗いへと逃げてしまった。

その場に残された俺たちの間に微妙な沈黙が降りてくる。

「聞かないのかね?」
「…何がですか?」
「ははっ! わかってるだろうにそんな言い方をするなんて君らしくないなぁ。あれだけ耳をダンボにして聞いていたのに何がもないだろう?」
「……」

豪快に笑われて居心地の悪さマックスだが、図星なだけに何も言い返せない。
それに、この俺をもってしても服部社長には口で勝てる気がしない。穏やかに見えてこの人はなかなかに強かな一面をもっている。

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