秘書と野獣
…………………本当に? 本当にそれでいいのか?
誠実な男が相手ならば、あいつは必ず幸せになれるだろう。
だがその先に何がある?
当たり前のように隣にいたあいつはいなくなり、あいつの全てがただ一人の男へと注がれていくのだ。
これまでのような付き合い方などできるはずがないし、いずれ仕事を辞めてしまえば接点すらなくなってしまう可能性だってある。
その時…俺には一体何が残されるというのだ。
築き上げてきた居心地のいい空間は消え去り、残されるのは希薄な付き合いしかできない人間だけ。その場限りの飢えは満たせても、また次の瞬間からより一層飢えに苦しみ、一生それから解放されることはないだろう。
その時にあいつはいない____
その未来を想像しただけでブルッと体の芯から震えが走った。
あいつが隣にいない。
たったそれだけのことで、足元から底の見えない闇へと落ちていく感覚が襲ってくる。
その刹那、一瞬にして視界が真っ白に染まった。
何故……
_____何故こんな簡単なことにすら気づけなかったのか。