秘書と野獣


「っ!!」

と、するりと動いた手が私の体をなぞる。すぐに怪しい動きを始めたそれに、慌てて私は身を捩った。
…つもりが大きな体にそれを遮られ、完全に身動きがとれなくなっている。

一体いつの間にっ!!!

「しゃ、しゃちょう…?! ひゃあっ?!!」

ツーッと背中を指でなぞられて思わず変な声が出た。

「だから社長じゃねーっつってんだろ。なんて言うんだ?」

「っ、…た、たけ、…たけ、たけ…る…」

「ドアホ! どもるにも程度があるってんだろ! ったくなんなんだよ、『たけたける』って…。どっかのアニメのキャラじゃねーんだぞ、俺は」
「…ぷっ!」
「おい、笑い事じゃねぇ。もう結婚すんだから、さっさと慣れろよ」

…なんだろう。
ちょっとふて腐れ気味にこんなことを言うあなたは、もしかしたら本当はずっと前からそう呼んでもらいたかったんだろうか? なんて、そんなことまで考えてしまう。

あれだけ自分に自信の持てなかった私が、あなたが与えてくれる愛でこんなにも前向きに変わっていくなんて。


「……愛してます。猛」


「 !! 」

溢れるままに口にした言葉に、ビクッと一瞬肩を揺らした社長が……みるみる頬を染めていく。

「え…」

…なにこれ。なにこれなにこれなにこれ。
これがあの野獣?
私の一言で真っ赤に顔を染めてるのが、あの野獣?!


………カワイイッ!!!


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