誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。



(由樹side)



泣き疲れて眠ってしまった真琴くんをそっとベッドに横にする。



頬に残った涙の跡を指で拭う。



「クッソが……ッ!!」



「燐理も少し落ち着こう?」



「これが落ち着いていられるかっての……ッ。」



その気持ちも分からなくはない。



夜遅くにマスターから連絡が入った時は驚いて心臓が止まるかと思った。



飛んできて実際に真琴くんを目にしても、それは変わらなかった。



僕は何をしてたんだ……ッ。



真琴くんが頼ることに慣れてないことは分かっていたことだったのに。



いつか頼ってくれるように、とずっと待っていた。



僕が気づいてあげられればこんなことにならなかったかもしれないのに。



絶対……1人でなんか行かせなかったのに。



自分に対しての怒りで頭がおかしくなりそうだ。



それは横にいる燐理も同じだ。



昨日からずっと真琴くんのそばから離れない。



きっと真琴くんのそばにいることで、自分を戒めているんだと思う。



そんな僕たちを見兼ねてか、マスターがそっと珈琲を差し出してくれた。










「結局…俺たちは真琴にとって何だったんだろうな…。
他のやつよりは時間を共有してた……はずだったんだがな。」



「燐理……。」



支えたいと……止めたいと思ってそばにいると決めたのに、僕はそれさえも出来なかった。



何が"変えたい"だ……。



僕には、そんな力などなかった……。












「そんなことはないと思いマスよ?」



声の方に目をやると、優雅に紅茶を飲む金髪の外国人が座っていた。



昨日、夜遅くに真琴くんを抱えてきてくれた親切な人。



「それにしても、この紅茶は美味しいデス。
故郷に持ち帰りたいくらいデス。」



「口にあったようで何よりです。」



この人も神賢者なんだろうか。



「確か……カイ、だっけ?
さっきのはどういう意味?」



カチャっとカップを置くと、彼は懐からカードを取り出した。










「タロット、カード……?」



「YES。私の能力は、タロットカードに出たものを私の想像で補い具現化するものデスガ……一般的な占いも習得しているのデス。」



そう言いながらカウンターの上にカードを並べ始める。



不規則に並べられたカードをじっと少し見つめると、その中から何かに導かれたように1枚のカードを引いた。



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