誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
走り続けてどれくらい経っただろうか。
やっと目的の場所に着いた。
あとは……この屋上の扉を開けるだけだ。
高校の屋上。
ここにいるなんて確証は何もない。
だが……ここにいる気がした。
ここで……俺たちを待っていてくれている気がした。
6年……か。
1人にさせちまってごめんな。
俺たちはいつもお前に救われてばかりで、結局あの時もお前に救われた。
少し記憶が戻るのが遅くなったが……それでも許してくれるか?
俺たちとお前が歩いた別々の6年間。
お前のことが思い出せなくても……ずっと心の中にいた誰かを待ち焦がれていた。
誰かの代わりとかじゃない。
今度は1人の男として、またお前と新しい物語を綴ろう。
ドアノブをゆっくり回して、扉を開ける。
そして、俺の視界に広がる光に包まれながら……お前は立っていた。
あの時短かった髪は長くなり、風になびいていて。
そうして、振り返ったお前は微笑みながら俺に言った。
「遅すぎて来ちゃったよ。」
「悪い。だが、ちゃんと見つけた。」
そうして俺は、ここに来るまでに考えていた言葉を口に出す。
「……おかえり、真琴。やっと会えたな。」
真琴は少し瞳を見開き、そして……一粒の涙を頬に流して言った。
「……うん。ただいま。」
俺たちの過ごした時間は、これから過ごす人生に比べれば、とてもちっぽけなものかもしれない。
それでも、俺たちはその時間の中で……人生で一番大切なものを見つけた。
時間は長ければいいってものじゃない。
少なくても、俺たちはかけがえのない関係になれるし、こうやってまた出会える。
俺たち人間は愚かな生き物だけれど、愚かなら愚からしく生きてやろう。
だが、舐められちゃ困るな。
俺たちは確かに愚かだが……俺たちが織り成す物語は、何度も生まれ変わる。
終わることは……きっとないだろう。