誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。



その頃、校舎の屋上では。



「……かったるい。」



ゴロンと横になって、吹かれてくる桜の花びらを眺める男。



そして、その傍らには1匹の黒猫。



〈良かったのかしら、入学式に出なくて。
代表挨拶、頼まれていたんでしょう?〉



「そんなもの、出ても仕方ないさ。
俺じゃなくたって代わりはいる。
それに、こんな天気の良い日に働きたくない。」



春の暑くも寒くもない気温。



俺はこの季節の風が1番好きだ。



〈まったくもう……。
真琴は面倒くさがりなんだから。〉



「昨日の仕事の疲れが残ってるだけ。」



昨日の依頼主は護れた。



終わった時には、グシャグシャの顔で何度もお礼を言われたけど……。



「殺されるようなこと、しなければいいのに。」



〈それはそうだけど、そうなってしまえば護り屋の仕事無くなるわよ?〉



「……そうだね。」



俺ー剣城 真琴は今日から高校生になった。



職業は高校生兼護り屋だ。



誰かを護る、それが護り屋の仕事。



依頼を断ることは殆どない。



昨日みたいに、殺し屋と対峙することが殆どだけれど。



自分が死ぬ危険だってある。



それでも、誰かを護れるならそれでいいと思ってる。



俺の命はいつだって捨てれるから。



そして、それは俺だけの力じゃない。



この黒猫、ビビがいてくれているお陰だ。



「ビビ、これからもよろしく。」



〈何よ、改まって。当たり前じゃない。〉



ビビは小さい頃からずっと一緒にいる、いわゆる相棒だ。



そして、ビビと出会ってからある変化があった。



それは追追話すことになるだろう。









プルルルルルーーーーーーーー



「……はい。」



《ま、護り屋……ッ?
た、助けて欲しいんだけど……。》



依頼主とは、ほぼ初めは電話とのやり取り。



だが、俺は決まって必ずすることがある。



「とりあえず話を聞きたい。
今日の夜、あの場所で。」



《わ、分かった!!》



護る相手と対面して本人から話を聞く。



でなければ、命を張って護れるほどの信用を俺が得られないからだ。



今日もか……。面倒臭いなぁ。



「よし、とりあえず行こうか。ビビ。」



〈はいはい。相変わらず忙しいわね。〉



そうぼやきながら俺の肩に乗るビビ。



起き上がってポケットに手を突っ込み、フェンスに飛び乗る。



「さぁ、今日も一仕事しますか。」



そのまま、俺とビビは落下していった。



落ちる寸前に、ガチャっと扉が開く音が聞こえたのはきっと気のせいだ。



まだ入学式は終わっていないはずだから。



だが、そんなことも着地する頃には忘れていた。














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