【完】『そろばん隊士』幕末編
包みを受け取ると、岸島と小野は辻で別れた。
もと来た道を三百坂をめざして歩いていると、騎馬の武士と行きあった。
こういうときには作法がある。
道を譲り、お辞儀をした。
この場合、馬上の者は挨拶をせねばならない。
「これはいたみいる」
「松平伯耆守家来、軽きものにございます」
「では」
騎馬の武士はよく見ると洋式の軍服に軍靴で、腰には刀から拵を直したとおぼしきサーベルが下がっている。
「…官軍、か」
呟くと岸島は、再び広小路を富坂に出て、小石川から三百坂へと戻る道筋を歩き始めた。