【完】『そろばん隊士』幕末編

だから言うわけではないが、と原田は、

「おれたちは何かの役に立ちたい一心でここまで来た。だがその志に近づけば近づくほど、何かを手放さねばならなくなる」

岸島くん、と原田は、

「きみは出来るなら人を斬るな。出来るなら、そろばんだけで生きて行けるようにしておけ」

「原田どのはいかがなされるご所存で?」

「おれは…刀を振るしか能がないから、それで生きてゆくよりほかはない」

おれには出来なんだことを、きみはやれ──原田はまるで遺言のようなことを言った。



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