【完】『そろばん隊士』幕末編
◆20◆
そういういきさつで。
ひそかに岸島が積立金の犯人探しを始めた頃、
「われわれは御陵衛士隊という新たな隊を作りたいのだが」
と、なぜか伊東側から申し出があった。
「さては察したな」
とだけ土方は言ったが、実際はわからない。
ただ。
言えることとして。
土方がもともと伊東派を新撰組と切り離したかったような節があったところへ、そういった申し出がなされた。
これは。
何らかの動機があった…と、自然の理として特別おかしい話ではない。
が。
この申し出によって、隊は近藤につくか伊東につくかという選択を、隊士たちは迫られたことになる。