【完】『そろばん隊士』幕末編
そんなある一日。
岸島は近藤から呼び出された。
「実は頼みがある」
と言うのである。
「これを島屋という両替商に届けてもらいたい」
と出したのは、袱紗に包まれた五十両の包みである。
「実はこの度、大丸で隊服を作ることとなった。ついては大丸と取引のある島屋を通じて支払うこととなったので、届けてもらいたい」
という。
なるほど公用なら勘定方に頼むのは当たり前であろう。
岸島は、
「承知いたしました」
と袱紗を胴巻きの袋へおさめると、
「では行って参ります」
と屯所を出た。