【完】『そろばん隊士』幕末編
斯くして。
勘定方に留め置かれることが決まって数日後、
「岸島くんはいるか」
急に声がかかったので行くと、原田がすでに鎖帷子を着込んで戦支度をしている。
「岸島くん、油小路に行くぞ」
岸島は意味がわからなかった。
しかし。
何か取り急ぐべき案件が出来したことだけは察せられたようで、徳田が持ってきた鉢金をつけ、鎖帷子をまとうと、
「羽織を」
と袖印のついた黒羽織を手早く羽織って外へ出た。