約束ノート
零士は子供らしからぬ、何の感情も抱かない顔で、踏み付けていた蟻達が運んでいた蝶をつまみ上げ、健太の方へと投げ付けた。

健太は歪ませたその瞳に涙を浮かべ、必死に蝶を避けた。

そして危なげに立ち上がると、零士の元から逃げ出した。

しかし零士は執拗に健太を追い続ける。

健太は呼吸を忘れる程、無我夢中で走った。

しかし、とうとう、零士の手が健太の肩を捕らえた。

健太は堪らずに振り返る。

零士の顔はにこやかに笑っていた。

そして笑顔を浮かべ、右手に持っているハンマーを健太の頭目掛けて降り下ろした。

「ぐちゅ!」

健太の頭の中で、この嫌な音が鳴り響いた。




篠原健太は汗だくで目を覚ました。

また例の夢を見てしまったようだ。
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