タバコと数式は思い出の中に ~私の好きな人は先生~
「とりあえず、それなりに上達してるとは思うぞ」
「指にマメ作らない程度には、ですか?」


クスッと笑いながら私がそう言うと、先生も少し怒った感じをしながらも笑った

まるで昔のようで、錯覚しそうになる

あの頃に戻ったかのように



8時が近くなった頃、作業が終わった

お礼を言う先生に「実習生に気をつかってどうするんですか?」と返して帰ろうとすると、ここにきてようやく先生はある忠告を告げた


「水瀬。実習最終日な、授業してもらおうと思うんだ」


「誰に?」という言葉は言わずとも分る事だが、聞いてしまいたいくらいだ


「やっぱり…やりますよね」


露骨に嫌そうな顔をする私を見て笑う先生は、やっぱり私より1枚上手のようだ


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