東の空の金星
オートバイと山下さん達がいなくなった後で、

店に戻ってマスターがコーヒーを淹れてくれた。

「『うりゃー』ってカッコよかったなあ。」とマスターは笑う。

「やめてください。」

「怪我しなかったから良かったけど、
腕とか折ったらパンが焼けなくなるだろう。」と大和さんが眉間にしわを寄せる。

「…ちっとも考えてなかった。」と言うと、

「…アホ。」とくすんと笑った。


「先輩、土曜日のお出かけ先がわかって良かったじゃない?」

とマスターが大和さんの顔を見て笑う。

「?」

「三島先生と毎週会ってるんじゃないかって心配してたからさあ。」

「将太、よせ。」

「あのひとと会ったりしてません!」と私が怒ると、

「だよねえ。俺も先輩にそう言ったんだけどねえ。」

「別に好きじゃないし。」

「あの男はやめておけ。」

「だからあ、何度言ったらわかるんですか!」

「先輩、ヤキモチ?」とマスターの笑った声に

「違う。」と大和さんは不機嫌に黙り込んでしまう。


…子どもか。

と思いながら、コーヒーを飲んだ。
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