東の空の金星
江ノ電にガタゴト揺られ、
鎌倉の町をぶらぶら歩いてガラス細工のお店に入り、
色の綺麗な髪留めを選んでいて
ガラスで出来た指先ぐらいの大きさのリスを見つけ
嬉しくなって買ってしまう。

単純だ。
気に入った小物を見つけて機嫌が良くなる。

ついでにさっき見たカフェで、パフェはどうだろう。

私がクルリと後ろを振り返ると

「やっぱり、シマちゃんだった。」

と三島先生が目の前立って、私に微笑みかけた。

「な、なんでいるんですか?」と聞くと、

「当直明け。いつもは『凪』に行くけど、今日は土曜日じゃん。
だから、この先のカレー屋でご飯食べようと思ってさ。
そしたら、そこに入ってくシマちゃんが見えた。」

とガラス細工の店を指差す。

「何買ったの?」

「髪留めと置物のリスを。」

「そう。
髪を下ろしてたし、制服じゃなかったから、違うかなって思ったけど、
僕ってすごいな。ちゃんとシマちゃんだってわかった。」

と自然に私の隣に立って、私が買った小さな紙袋をもってしまう。

さすが、女の子に慣れてるひとだ。


「返してください。」と言ってみるけど、

「次はどこ行くの?」と聞かれ、

「パフェを食べに行きます。先生はカレーでしたね。では。」

と紙袋をうけとろうと手を出すと紙袋の取っ手ごと手を握られてしまう。

「離してください。」と言うと、

「一緒にパフェを食べたら。」と私が向かおうとした方向に歩き出す。

やれやれ。

これは逃げられなさそうだ。

「先生、強引すぎませんか?」と言うと、

「チャンスは逃さない主義なんだ。」とニッコリ王子の顔で微笑んだ。
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